家は30年経てば建て替え、というなんとなく常識になっている考え方。
私たちは日々建築の仕事をする中でこの常識に疑問を感じ、
建物の新しい寿命や価値がある事に気づきました。
このことを伝えていきたいといろいろな角度から考え、
使い捨ての文化ではなく「持続化できる家」を創るための
「知恵」をこのコーナーでお届けしていきます!
さて、今回は「バリアフリーと収納のはなし」です。
この2つになんの関連性が? と不思議に思う方がいるかもしれませんね。
たとえば、高齢になった両親のどちらかが一人になってしまったとき、自宅に引き取って同居しようか…という話になることがあります。
そこで問題になるのがバリアフリー対応と、家族が増えることでモノが増えること。
両親の世話や日々の家事や仕事、資金面のこともあり、建て替えや大規模なリフォームは難しい…と悩まれる方もいるはず。
なるべくお金をかけず期間等の負担も少なめで、今ある家をバリアフリー対応にしつつ収納力もアップする方法をご提案できないだろうか? との思い企画したのが今回のテーマです。
編集部:まずバリアフリーについて教えてください。普通の家には細かな段差がたくさんありますが、床の張り替えなど大規模な工事が必要かも? と不安になります。
齋藤:今はいろいろな便利グッズがあるから大丈夫。写真にあるような、ほぼ置くだけで完了する室内用スロープもあります。屋外の3〜4段程度の階段用なら、アルミ製の段差解消スロープも豊富に出ています。
慌てて業者に頼まずに、どうしても床や階段の工事が必要かどうか、よく検討すると良いと思います。
編集部:なるほど! とはいえ、どうしても工事が必要な場合もありますよね?
齋藤:そのときは、たとえば床の工事なら仕上がりの材質選びを検討することが大切です。フローリングは掃除がラクな点が良いけれど、冬場の冷たさが気になるかもしれません。オフィス用のカーペットタイルならその心配は少なくなります。車椅子を使用する可能性も考慮するなら、傷がつきにくい樹脂製のウッドタイルなどもオススメ。
編集部:仕上がり材によっては、機能だけでなく見た目も随分変わりそうですね。新築ではない場合、リフォームしても多少の段差が残ってしまうこともありますか?
齋藤:そうだね、確かにそれはあり得ます。そうなるとつまずいたり、うっかり段差に気づかず転んだりする危険性があるので、わざと目立つように色違いの仕上がりにするのもアイデアです。何にしても、住まわれるご年配の方の考えや意見を良く聞きながら進めることが一番大事。あくまで使う方の感覚を最優先にしつつ、介護福祉士さん達の知識も取り入れながらリフォームしれば失敗なくスムーズに完了しますね。
編集部:そうか、介護福祉士さんはプロですもんね。アドバイスしていただかない手はありませんね。気づきませんでした!
床や階段以外に、バリアフリーといえばトイレやお風呂が気になります。
齋藤:お風呂に関しては、タイルのお風呂や段差のあるお風呂は、思い切ってシステムバスにすることをお勧めします。段差の解消だけではなく、浴槽への出入りが格段に楽になるし、肘がつける浴槽やベンチ型浴槽など、家族みんなにとって便利な機能がありますよ。さらに浴室全体を保温してくれる機能性の高い作りになっているのでオススメです!
編集部:お風呂ってそんなに進化しているんですねえ!
齋藤:どうしても費用がかけられない時は、タイルの床に貼れるシートや、段差を解消する施工法もあるので、相談してもらえればいろいろとご提案できます。
編集部:トイレはどうですか?
齋藤:便座が自動で上がる便座などもありますが、そこまで必要なければ、とりあえず住んでみてから検討しても良いかもしれません。
編集部:次は収納について知りたいのですが、家族がひとり増えるとなると、想像しただけで大量のモノが増えそうですよねえ。気が遠くなります。これ以上どこにも収納スペースはない! というお宅がほとんどではないでしょうか。
齋藤:たとえ家族が増えなくても、収納スペースを増やしたい! と切望している人はたくさんいますからね(笑)。
編集部:そういう方のためにも、ぜひおすすめの収納力アップ法を教えてください。
齋藤:作り易いのは、今ある押入れやクローゼットの改造です。もう少し奥行きを広げ、ウォークイン型にしたり、いつでも調整できる棚を作ったりすると良いでしょう。また、出し入れがしにくいスペースがあるなら、そこを使いやすいように作り変えるだけでも、収納機能が上がります。
編集部:あ〜! 確かに、たくさん収納スペースがあっても、手が届きにくくてほとんど活用していない場所ってありますね。
齋藤:収納に関しては、いろいろと計画を立てて実行していくうちに不用品の見直しにもなり想像以上に便利に生まれ変わったりします。
編集部:他に大々的に収納力がアップする秘策などありませんか!?
齋藤:僕たちみたいな業者の人間が一緒に家を見て回ると、もともと使っていない空間で収納に使えそうなスペースがあちこちに見つかります(笑)。
例えば、有名どころ(?)なら階段下。室内側から利用しづらければ、外壁側にドアをつけることで便利に使えたりします。
編集部:ほほう〜。他には?
齋藤:床下や屋根裏なども、じつは一般の人が思っている以上に広い収納スペースを確保できるんです。床下収納庫も、今はいろいろと工夫された商品があるので、住まいにあわせて選ぶと使いやすいですよ。屋根裏収納としては、天井に収納階段を作る小屋裏収納タイプや、天井を壊して作るロフトタイプなどがあります。
編集部:どちらも秘密基地みたいで、子どもが喜びそう…! 収納力も抜群ですね。
齋藤:あとは、洗面所やトイレなどの上方スペースはガランと空いていることが多いので、そこに棚を追加したり、壁の厚みを工夫して小物の収納を増やすこともできます。
リビングが広めなお家なら、畳の小上がりスペースを作ってその下を収納にすることができますよ。これはマンションにも使えるパターンですね。床下収納は取り出しが大変なので、使うときに上がってくるようなものがあればいいんだけど…。
編集部:いろいろあるんですねえ。最初から「無理!」って思わないことが大事だと思いました。齋藤社長と話していると、なんだか前向きになりますね(笑)! なんとかなりそうじゃん!? って気が楽になりました。ありがとうございま〜す♪
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